「この映画はホラーではない。恐怖に震える悪夢的な家族の悲劇の物語である(監督・アリ・アスター)」
ホラーじゃない?
いやいやいや。
ホラー映画「へレディタリー/継承」をnetflixで視聴しました。
系統としてはローズマリーの赤ちゃんとか、オーメンとかエクソシストとか、恐ろしい悪魔の呪いで一家に不幸が訪れるオカルトホラー作品ですね。
ただ、この作品は過去のオカルトホラー映画の焼き直し的なものではなく、独自性に満ちていて満足感たっぷりの内容となっています!
どこかイット・フォローズを彷彿とさせる、終始不穏な空気感漂う独特な作品でしたね〜。
その独特さの一端を担っているのが、「コッ」と舌を鳴らす女の子で妹役のチャーリーこと、ミリー・シャピロちゃんです。
顔つきが独特で「生まれつきなのかな?」と不思議に感じた方も多いことでしょう。
とまあ色々と謎の多い作品なので、何がなんだか分からなかったという方に、解説付きのネタバレ感想をストーリーを追いながらざっくりとお伝えしようと思います!

前置き長えなオイ
ホラー映画「へレディタリー/継承」あらすじ
ある日から一家の前に様々な怪異が現れはじめ、不幸が訪れる。
家族の関係も悪化し、遺族セラピーに通うアニーの前に、ジョーンと名乗る中年女性が現れ、亡くなった遺族を降霊する方法を教わる。
降霊術を行った結果、地獄の門が開き、アニー一家に更なる不幸が訪れる…

しっかしすげえ表情だな…トニ・コレットさん…
ホラー映画「へレディタリー/継承」トレーラー&キャスト
【脚本】アリ・アスター
【キャスト】トニ・コレット 、アレックス・ウルフ 、ミリー・シャピロ、アン・ダウド 、ガブリエル・バーン
ホラー映画「へレディタリー/継承」ネタバレ解説&感想
以下、ネタバレを含みますのでご注意を。
悪魔とか非現実的な現象を描いたスピリチュアルな作品なので、好みはけっこう分かれると思います。
僕はどちらかというと…
こんなん大好物なので超面白かった。

文句なしの★★★★★でした!
(当ブログで初の星5つ評価!)
僕は殺人鬼とか虐待とか現実的なホラーよりも、比較的こうゆう非現実系の幽霊とか悪魔ものとかが好きなのです。
芸術性があったり、人智を超えた感覚的なものとか、そうゆうものになぜか惹かれるんですよね〜。
まあそんな話どうでもええわということで。
①妹チャーリーが死亡し、家族は不幸のどん底に
チャーリーの肉体には悪魔の王ペイモンが宿っていた
いきなり完全ネタバレになりますが、チャーリーは産まれた時からすでに悪魔ペイモンが肉体に宿っていたのです。
オープニングでは祖母エレンの葬式が行われていて、参列者の男(ペイモン信者と思われる)がチャーリーを見てニタリと笑っています。
お前はペイモン召喚のために首を捧げる運命なんだぞ…という意味合いなのでしょうか。
それとも、ペイモンを宿しているチャーリーに対する、敬意や慈愛を表する笑みなのだろうか。

そこまではわからんけども…
伏線になっていることは確かだと思われます。
産まれた時から泣かなかった、鳩を衝突死させて首ちょんぱする、不思議なものが見える、などチャーリーはペイモンの能力を宿していることがわかります。
しかしチャーリーは女性です。
ペイモンが必要としている男性の肉体なのです。
なのでチャーリーの命は放棄され、その首は供物となってしまいます。
祖母エレンはペイモン信者のリーダー
ちなみに、妹に「チャーリー」という男性名を付けたのはペイモン信者である祖母エレンだと思われます。
エレンの息子(アニーの兄)チャールズは16歳で自殺しています。
母親であるエレンにペイモンを宿されそうになり、それに抵抗して死亡した模様。
そこでエレンはチャールズの代わりに孫のチャーリーに託し、溺愛したのでしょう。
もう一人の孫である長男ピーターは男性ですが母のアニーに守られていたので、祖母エレンも介入できなかった…。だからチャーリーを男として育てたという設定です。
妹チャーリー(ミリー・シャピロ)の顔って病気?
この女の子顔が…と思った人も多いと思います。
彼女は鎖骨頭蓋異形成症という先天性の障害を抱えているそうです。
両親から受け継がれる先天性障害です。それは歯と首輪の骨の発達に影響を及ぼします。この状態と診断された人は、顔に少し変形があります。
この映画では不気味にメイクされていますが、実際はカワイイ女の子ですよ。
っていうか映画のジャケットにもなっていますが、本当に印象的な顔をしていますよね。
まさにこの作品の顔というか。
前半にあっさり死亡したので、その後は霊体となって活躍するのかな〜と思っていたらチョイ役で終わってしまいました。
それが残念でなりません!
ミニチュアが意味するもの
母親のアニーはジオラマアーティストで、ミニチュアを作成しています。
これは、ミニチュア=俯瞰している、つまり信者たちや外部の力に操られているという意味合いの暗示・メタファーになっています。

このミニチュアが不気味で謎めいているんですよね。
娘の事故現場とか、なんでそんなもん作ってんのアンタ?とツッコミたくなるし。
チャーリーの死亡事故
チャーリーはたまたま事故で死んだのではなく、信者たちの呪いによって操られて死んでしまったのです。
よく見ると、チャーリーが衝突した電柱にはペイモン教のシンボルが描かれています。(上の画像)
つまりこれは信者たちの呪いによって、運命を操られていたということを示唆しています。

なるほど。お前にしてはなかなか鋭い考察じゃねーか
②降霊術で地獄の門を開いてしまう
チャーリーの死後、家族関係は悪化してギクシャクし始めます。
アニーは集団セラピー会場でジョーンという中年女性と知り合い、お茶に招かれます。
このジョーンがアニー一家の更なる惨劇を生むキーパーソンとなります。
アニーがジョーンに飲まされたお茶の中には黒い何かが混入していましたが、これは何だろう?

わからんのかい!
その後アニーはジョーンに騙され、家族全員で降霊術を行い地獄の門を開いてペイモンを招き寄せてしまいます。
サルヴェ、ペイモン、レックス、オクシデンタリウム、バルク、ハ・ペイモン……ってこれ何すか?

こっちが聞きたい
③信者たちの儀式が本格的に始まる
地獄の門を開いたことで、ペイモンの気配が高まります。
ピーターは授業中にガラスに反射した自分の顔が笑っていることに気づく。
これはペイモンが「もうじきお前の肉体は自分のものになる」という予兆だと思われます。
ミニチュアを破壊するアニー
アニーの作るミニチュアは、未来の自分たちを暗示するように描かれていきます。
その運命に逆らうかのように、アニーはミニチュアを破壊。
しかし運命とは皮肉なもので、決められた道筋に逆らうことは叶いませんでした。

かわいちょ…
ジョーンの呪い。ザンタニー、ダグダニー、アパラゴン、ピーター
校庭でくつろいでいたピーターはジョーンから呪いの言葉を投げかけられ、ペイモンに体を乗っ取られかけて自ら顔面を叩きつけてしまいます。

不気味だし、痛すぎるし、きっついシーンでしたね…
光が意味するもの
しばしば光線がチャーリーやピーターの前に現れるが、これはペイモンの魂が近寄っているというサインらしいです。
ペイモンから発せられるエネルギー体みたいな。
エレンの遺体と父スティーブンの焼死
アニーは儀式に使われた祖母エレンの首なし遺体を屋根裏で発見。壁にはペイモンの紋様が。
信者たちがここにエレンの肉体を隠し、儀式の時を待っていたようです。
その後、父親のスティーブンは暖炉の前で焼死してしまいます。
スティーブンは血筋的にペイモンの器ではないと判断され、ペイモンに消されてしまったのです。
ペイモンが宿ることができるのは、リー一家(アニー一家)の血筋のみ。
婿養子のスティーブンは外部の関係のない人間ということです。

酷い話やで…
④アニーは犠牲となりペイモンはピーターの肉体に降臨する
ピーターは魂を乗っ取られた母親に襲われます。
屋根裏部屋の扉を逆さま状態でヘドバンでカチ割ろうとするアニー。

この高速ヘドバンは斬新。
とても笑い…あいや、衝撃的でした。
糸で自分の首をちょん切るアニー
どんな魔法を使ったのか、頭突きしていたはずのアニーはすでに屋根裏部屋にいて宙に浮いています。

壁をすり抜けられるなら、ヘドバンした意味ないですやん…
という無粋なツッコミはなしで。
そして自らの首に巻いた糸を引きまくるという、これまた斬新なホラーシーン。えぐい…
この監督、かなりのホラー映画を研究分析しているのが分かります。
その上で自分がホラー映画を作るなら、他にない新しいものを生み出したいという精神がヒシヒシと伝わってくるからです。
もうそのクリエイティビティと芸術家魂だけで最高評価を与えたいくらいです。僕はそうゆうエネルギッシュで斬新なものを見たいのですよ。

何様だ?お前?
不気味な全裸姿の信者たちとツリーハウス
ピーターが振り返ると、そこには全裸姿のペイモン信者がにこやかに佇んでいる。
ペイモンの肉体となるピーターに挨拶でもしているのでしょうか。
その様は「進撃の巨人」に出てくる巨人みたいに不気味ですね。
左側にいる女性の、こちらを誘惑するような細やかな右手の演技がとても印象的。
わざと右手に照明が当たるように撮影しているので、意図的にそうしているのでしょう。
驚いたピーターは窓を突き破って外庭に落下。

悪魔崇拝儀式といえば全裸がデフォよね。
全裸の信者たちが見守る中、オープニングでも登場したツリーハウスに向かうピーター。
この小屋の中ではペイモン降臨の儀式が行われていました。
このあたりからふんわりとした宗教的なBGMが始まり、全裸信者たちに囲まれたシュールで狂気的なシーンに入ります。

こうゆう狂っているの大好き
ペイモンの王冠を被せられたチャーリーの首に向かって拝礼する信者たち。
祖母エレンの写真が飾られており、エレンはこのカルト集団のリーダー的な存在だったことも判明します。
チャーリーにペイモンを宿らせたかったが、チャーリーは女性だったので兄のピーターの肉体が必要だったのです。
王冠をかぶらされたチャーリーの足元には斬首された状態で拝礼する祖母エレンと母アニーの姿が。
ペイモンのイラストからわかるように、三人の首はペイモン降臨のための供物として必要だったようです。
こうしてピーターの肉体にペイモンが宿り、完全体となったのでした。
チャーリーの魂は死んでいない?
これは僕もよくわからなかったのですが、最後にジョーンがピーターに向かって、
「チャーリーもう大丈夫よ。あなたはペイモンになった」
と語ります。
ちょっと複雑だけど、ペイモンと同化していたチャーリーの魂が、兄のピーターの肉体に宿った。ということでしょうか。
どうなんですか?ねえ?

知らんがな
ホラー映画「へレディタリー/継承」感想まとめ
とまあ、こんな感じでざっくりと解説してみました。
ヴンヴンヴンヴン…と鳴り響く重低音BGMが不安感を助長していて、映画ならではの演出だなあと思いました。
チャーリーの鳴らす「コッ」というあれですけど、僕がティーンの時は前方からやって来る不良が「コッ カッ」と舌を鳴らし、相手を挑発するサインの役割をしていました。
その挑発に乗ったら喧嘩になるし、そこでおどおどしたら多分カツアゲされていたと思います。
お前はその「コッ カッ」をどう対処したんだ?という話ですが…
全力で無視して全力でスルーして(逃げて)いました。

懐かしいなあ…
そんなウザい奴らも今となってはただの思い出(遠い目)
今回の考察ですが、実は公式サイトを参考にさせていただきました。
ぶっちゃけここを読めば全部わかると思いますw
追記:アリ・アスター監督第二作目「ミッドサマー」を視聴しました。
へレディタリー/継承を視聴する
ホラー映画「へレディタリー/継承」はアマプラでも視聴できます。
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